1 resultado para security governance

em Academic Research Repository at Institute of Developing Economies


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バングラデシュにおいて、貧困削減と人間の安全保障は喫緊の課題である。人口の約4割が貧困線以下の生活水準を余儀なくされているうえ、人権問題や災害対策等々の非経済的側面においても問題山積である。具体的に大きな問題と考えられているのは、暴力、差別、難民、子ども、天災である。天災以外は日常リスクの範疇に入る問題であり、特にマイノリティ、難民、女性、子どもといった脆弱層に対して配慮が必要とされる。  近年のバングラデシュの経済パフォーマンスは他の最貧国と比較すると優れている。経済成長率はここ10年程度、平均5%という比較的高い値で推移している。結果として所得面のみならず非所得面(教育、ジェンダー、保健)における貧困削減も一定程度進んでいるが、貧困削減と人間の安全保障は依然として大きな課題である。  「人間の安全」は国家が保障することが望ましいのであるが、現状においてバングラデシュでは、残念ながら国家に多くを期待できない。人々の安全を守るはずの警察でさえ、機能に大きな問題があるといわれている。  バングラデシュにおける貧困削減、人間の安全保障を達成するために日本が援助する際に留意すべきことは2点ある。第一は、国家のガバナンスの改善への協力の必要性である。具体的には公務員の能力開発への貢献が考えられる。第二は、バングラデシュが経済成長、貧困削減共に一定程度の成果を上げていることから、貧困層の人々の生活がこれ以上悪くならぬよう支えるための援助のみならず、より積極的に、貧困層の所得稼得の能力や機会を増大させることを企図した援助も有効と考えられることである。後者のタイプの援助としては投資奨励や輸出奨励のための援助が含まれよう。輸出やそれを目的とした投資を奨励することにより、貧困層の雇用機会拡大が期待できるからである。事実、バングラデシュにおいては輸出指向の縫製業が貧困層に大きな雇用機会を提供していることが知られている。  このようにバングラデシュにおいては、これまで達成した経済成長をより進めて貧困削減の歩みを速めることと、都市・農村における人間の安全保障の達成が同時に求められているのである。