アジアは一つになれるか？: ASEAN型「統合」からの脱却の必要性

東アジア共同体の議論は、FTAが基礎になる。だが、FTA自体が本当の統合なのか疑問が残る。もし、アジアがEU型の本格的な深い統合を目指すなら、ASEAN中心主義や中国の深い関与が足かせになる。経済発展と民主化が一定水準に達したアジアやオセアニアの先進国による新たな統合の核が必要である。

IT Clusters in India

One of the facilitating factors that enabled the rise of IT industry in India is the evolution of IT clusters. A study of these clusters can provide interesting insights. The rise of the Banglaore IT cluster was due, among other things, to some of the policies the Indian government took three decades or earlier. It would be difficult to talk of "benign neglect" of the government towards this sector. Different factors worked in the case of Hyderabad. A comparison between the IT clusters in India has much to tell the new emerging IT clusters in India as well as those outside of it.

IT Offshoring and India: Some Implications

There has been a large spurt in the offshore outsourcing of Information Technology (IT) recently. India has been a major recipient of such work. There have been loud protests against the "loss" of jobs in the US as work was shifted to India. The large inflow of IT related work has also had major impact on the Indian economy. There are implications on the foreign policy level as well. While the economic implications are well known, we try to see a little of the foreign policy implications in this paper.

一国両制下における統合：中国大陸と香港を中心に

香港返還は一国両制のもと、統一を果たしても領域ごとの制度統合を行わなかった。しかし、密接な経済交流の存在は、領域間の統合を不可避なものにする。現在の香港SAR基本法の元で、どの程度の統合が可能なのか、あるいは可能性があるのかを検討した。さらに経済統合と民主主義のトレードオフの関係も指摘している。

バングラデシュにおける貧困削減と人間の安全保障

バングラデシュにおいて、貧困削減と人間の安全保障は喫緊の課題である。人口の約4割が貧困線以下の生活水準を余儀なくされているうえ、人権問題や災害対策等々の非経済的側面においても問題山積である。具体的に大きな問題と考えられているのは、暴力、差別、難民、子ども、天災である。天災以外は日常リスクの範疇に入る問題であり、特にマイノリティ、難民、女性、子どもといった脆弱層に対して配慮が必要とされる。 　近年のバングラデシュの経済パフォーマンスは他の最貧国と比較すると優れている。経済成長率はここ10年程度、平均5%という比較的高い値で推移している。結果として所得面のみならず非所得面（教育、ジェンダー、保健）における貧困削減も一定程度進んでいるが、貧困削減と人間の安全保障は依然として大きな課題である。 　「人間の安全」は国家が保障することが望ましいのであるが、現状においてバングラデシュでは、残念ながら国家に多くを期待できない。人々の安全を守るはずの警察でさえ、機能に大きな問題があるといわれている。 　バングラデシュにおける貧困削減、人間の安全保障を達成するために日本が援助する際に留意すべきことは2点ある。第一は、国家のガバナンスの改善への協力の必要性である。具体的には公務員の能力開発への貢献が考えられる。第二は、バングラデシュが経済成長、貧困削減共に一定程度の成果を上げていることから、貧困層の人々の生活がこれ以上悪くならぬよう支えるための援助のみならず、より積極的に、貧困層の所得稼得の能力や機会を増大させることを企図した援助も有効と考えられることである。後者のタイプの援助としては投資奨励や輸出奨励のための援助が含まれよう。輸出やそれを目的とした投資を奨励することにより、貧困層の雇用機会拡大が期待できるからである。事実、バングラデシュにおいては輸出指向の縫製業が貧困層に大きな雇用機会を提供していることが知られている。 　このようにバングラデシュにおいては、これまで達成した経済成長をより進めて貧困削減の歩みを速めることと、都市・農村における人間の安全保障の達成が同時に求められているのである。

Procyclical Productivity and Returns-to-Scale in Philippine Manufacturing

The Philippines is regarded as a highly oligopolistic economy, and it is argued that this is a cause of the relative stagnation of the economy to neighbouring East Asian economies. This presumption might be associated with increasing returns to scale and market power, which are consistent with the procyclical total factor productivity that is observed in the Philippines and the United States. However, this study found no strong evidence supporting increasing returns for aggregate manufacturing and three-digit manufacturing industries during 1956-1980 in the Philippines, based on data constructed by Hooley (1985). Further, this study does not support external effect discussed in Caballero and Lyons (1992).

バングラデシュの政府と公益

バングラデシュのようにガバナンスの弱い国では政府のみならず民間部門が公益実現のために大きな役割を果たしている。公益を担う民間部門は非営利団体でもあり得るし、利益を追求する私企業でもあり得る。いずれにしても政府が十分に機能していない場合には誰かがその肩代わりをしなければならない。誰がどの部分を担うのか、は国によって異なるだろう。バングラデシュの例はそのパターンの多様性を我々に教えてくれる。

物乞いするのは貧しいからか

大学3年の夏休みに物乞いをした。岩手の地方都市に帰省しており、そこから電車で1時間ほどの盛岡に用事があった。用事を済ませたら古本屋があり、そこで鳥居泰彦著『経済発展論』を見つけた。以前から欲しかった本なので、それを買うと帰りの電車賃しか残らないことを知りつつ、買った。盛岡駅に着いたら、実は所持金が電車賃に数十円足りないことがわかり愕然とした。（以下略）